あるふぁ通信令和2年9月号

2020年9月4日

あるふぁ通信令和2年9月号

九月とはいえまだ夏を思わせる暑い毎日です。皆様いかがお過ごしでしょうか。今回は、呂律(ろれつ)について草薙(言語聴覚士)がお伝えします。

「呂律が回らない」という言葉があります。舌の動きがなめらかではなく言葉が不明瞭に聞こえる状態のことです。言語聴覚士は「呂律」の改善については、ほぼ専売特許ともいえる資格であり、小児、成人ともに呂律に対する訓練を担当しています。

小児の構音障害で一般的なのが、口腔器官に特別な問題がないのに上手く発音できない(機能性構音障害といいます)、例えば「サ行」が「タ行」になってしまい「サカナ」→「タカナ」に聞こえるような場合です。就学前になって「サ」と「タ」の違いがわかるのに、「タカナ」と発音している場合には、正しい発音の仕方を練習します。

成人の分野では、脳血管疾患などによって、発話に関わる器官に何らかの異常が生じた結果、呂律が回らなくなった、声が小さくなった、など発話が不明瞭になってしまう運動障害性構音障害のリハビリを担当することが多いです。

障害が軽度の場合は、舌の運動訓練などで軽快することが多いのですが、後遺症として不明瞭な発話が残る場合があります。食事は、むせずに食べられて、舌の動きも上下左右に動くのに、呂律がどうも回らない、はっきりとしないといったケースです。

このような場合は、いわゆるお口の体操や発声訓練をいくら頑張っていても、なかなか改善しません。話しにくくなった状態で、なんとかはっきりと話そうとしている間に、間違った構音の仕方を習慣化してしまっていることが多く、自然な話し方に修正をしていく必要があります。

このリハビリを行うには、舌の運動だけではなく、音声学、音響学、言語学といった専門的な知識が必要となり、言語聴覚士がもっとも得意としているところです。発症からの時間が短い方が早く治りやすいですが、数年経過していても、その分時間はかかりますが、改善していく方が多いです。
呂律でお困りの方がいましたら、ぜひお声がけください。

付録:相手の言葉を聞き取れない時に、どうするか?

構音障害のある方とお話をする時に、うまく聞き取れないことがあります。わからなかった時は聞き返しをして、相手の意図がわからないままにしないようにすることが基本ですが、あまりに聞き返しが多いと、失礼ではないか、傷つけてしまうのではないかと心配になってしまいますね。

今回は、構音障害の方のお話を聞き取る工夫をご紹介します。

① 声が小さくて聞き取れない→マイクを使います

口元に耳を近づけて、聞き取るのも可能ですが、それを続けるのはお互いに辛いものです。声が出しにくい状態で、頑張って大声を出そうとし続けると疲れますし、だんだん話をする気はなくなってしまいます。そこで、簡易的なものでいいので、マイクを一つ持っていると重宝します(私は常に持ち歩いています)

② 声は出ているが呂律が悪くて聞き取れない→小さい声で話すよう促します

呂律が悪い方によくやってしまう声かけに「大きな声ではっきり話して」がありますが、これが逆効果となってしまう場合があります。
呂律が悪いというのは、具体的には、構音をする時に舌が本来接地する場所に接地できていないという状態です。これが、大きい声ではっきり話そうとすると余計な力が入ってしまって、舌と接地面の距離が離れてしまいます。

力が足りないから舌の動きが悪いのではなく、余計な力が入ってしまうので、舌の動きが悪くなっているというケースが実は多いのです。

このような事から、「小さな声でゆっくり」と声をかけると、途端に聞き取りやすくなることがあります。この時にマイクを使うとなお良いでしょう。

どうやっても聞き取れないことがある場合もあります。そのような時はどうするのか?これもコツがあります。聞き取れる言葉が少ない場合でも、何の話題を話しているのかをわかってしまえば、推測がつくので聞き取りやすくなります。何の話題を話しているかわからない時は、聞き返しをして確認します。聞き返しでわからなくても「○○のことですか?」など、話題がわかるまでは確認をするのも有効な手段です。


 

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