あるふぁ通信令和2年10月号

2020年10月7日

あるふぁ通信令和2年10月号

秋気肌にしみる季節ですが、皆様おかわりございませんでしょうか。

今回は、高次脳機能障害について草薙(言語聴覚士)がお伝えします。

高次脳機能障害とは、脳の病気や事故などにより脳を損傷することによって、認知機能(注意、記憶、言語、社会的な行動など)が低下し、日常生活に支障がでてしまう状態をいいます。

脳損傷でよく起こる体の麻痺など見える障害に対して、高次脳機能障害は「見えない障害」であり、特に当事者である本人は障害の自覚が難しいという特徴があります。ひとつ例をあげてみます。
脳梗塞を発症したが、体の麻痺はなく、病棟内を元気に歩いている。ご本人はすぐにでも退院を希望しているが、観察していると、時々、すれ違う車椅子に当たりそうになっている

この方に、神経心理学的検査(線分末梢試験)を行った結果が
左側にほとんど線が引けてない
ことがわかります。

これは、左半側空間無視という症状で、左側に対して注意が向きにくくなります。視野欠損などではないので、本人は左側を見落としていることに気がつきません。
このまま家に帰ったら・・・事故に合う、怪我をする可能性が高いですね。

これは一例ですが、高次脳機能障害は生活に支障がでているのに、本人は気がつきにくいし、あまり深刻にとらえられません。その結果、家族や関わる人との間に認識のギャップが生まれ、お互いに感情的になり関係性が崩れてしまいやすい特徴があります。言語聴覚士は、機能訓練に加え、障害の特徴を捉えての助言、生活しやすくなる工夫、関わる人とのコミュニケーションの支援をすることができます。お困りの方がいらっしゃいましたら、高次脳機能障害であるかどうかわからない場合でも、気軽にご相談ください。

付録 言語聴覚士の行う神経心理学的検査

さきほど、ご紹介した半側空間無視の検査で模写課題があります。
花の絵を患者様の前に置き「同じように書いてください」と教示します。

典型的な半側空間無視の方は右の絵を描いて「終わりました」と自信を持って言います。「全部書けていますか?」と確認しても、「はい」と答えます。
完璧に書けていると、露程も疑っていません。症状の自覚は本当に難しいです。

次に、ストループ効果という情報が干渉し合うことを利用して、目的とする情報にのみ注意を向ける機能を評価する検査のひとつ「上中下検査」を紹介します。
左側から一文字ずつ書いてある文字を読むのではなく、その文字が書いている位置(上・中・下)を言います。

左から、「上 中 下 中 中 」というよう文字の位置を言っていきます。

前頭葉を鍛えるトレーニングにもなりますので、トライしてみてください!



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