あるふぁ通信 2020年10月号：高次脳機能障害について

秋気肌にしみる季節ですが、皆様おかわりございませんでしょうか。
今回は、言語聴覚士の草薙が「高次脳機能障害」についてお伝えします。

🧠 高次脳機能障害とは？

脳の病気や事故などにより脳を損傷することで、認知機能（注意、記憶、言語、社会的な行動など）が低下し、日常生活に支障が出てしまう状態をいいます。
体の麻痺など見える障害に対して、「見えない障害」であり、特に当事者である本人は障害の自覚が難しいという特徴があります。

事例：左半側空間無視（ひだりはんそくくうかんむし）

「体の麻痺はなく元気に歩いているが、左側の障害物にぶつかりそうになる」というケースがあります。
これは左側に対して注意が向きにくくなる症状で、視野欠損とは異なり、本人は見落としていることに気づけません。

本人は気づきにくいため、周囲との認識のギャップが生まれやすく、関係性が崩れてしまうこともあります。
言語聴覚士は、機能訓練に加え、生活の工夫や周囲の方とのコミュニケーション支援も行います。

📝 【付録】言語聴覚士が行う神経心理学的検査

① 模写課題（半側空間無視の検査）

花の絵を見本と同じように描いてもらいます。
典型的な症状の方は、右半分だけを描いて「終わりました」と自信を持って答えることがあり、症状の自覚の難しさが現れます。

② 上中下検査（ストループ効果を利用）

文字を読むのではなく、その文字が書いている「位置（上・中・下）」を答える検査です。
目的とする情報にのみ注意を向ける機能を評価し、前頭葉を鍛えるトレーニングにもなります。

• 例：「上」という文字が、枠の下の方に書いてある場合
  → 正解は「下」（文字につられずに位置を答える）